上州住憲重作 天文九年二月日

 


  憲重最古の伝存刀剣『上州住憲重作 天文九年二月日』
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 上州住憲重』について
 憲重は、現在の月夜野町淵尻に住んでいた。(石坂富久氏前の畑)今、その場所からたたらがでる。憲重の作は、ごく少なく、全部集めても5、6振りだろうとされている。その当時の刀かじ1人に対して、砂鉄取りが20軒ぐらいは必要とされ、1つの部落が全部まとまって作ったことになる。利根には砂鉄山鉄も少く、1年間で1振りぐらいであったらしい。
  阿部孝・中村和三郎編『利根・沼田の文化財 指定文化財週間利根社 1970)
  
 群馬県立歴史博物館が確認した憲重作による脇指・拓影・大身槍の5例は銘振りが類似し、特に「州」の文字に共通した特徴がある。憲重は、天文15年と17年の年紀銘から天文10年代に活動したことが窺われ、天文期における上野国の良工として広く知られた刀鍛冶であったと推定される。

  平野進一・小山友孝「中世上野国における刀鍛冶の基礎的研究」
    『群馬県立歴史博物館紀要 第26号』群馬県立歴史博物館 2005)
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 『日本刀名鑑』に憲重は、沼田住、初代は天文、2代永禄頃、上杉憲房・憲寛の鍛冶としている。  
 紀要によれば、最も古い作刀例は、天文拾五年八月日の年紀がある「上州住憲重作」の脇指であるが、拓影のみしか確認されていない。伝存刀剣として最も古いものは、群馬県立歴史博物館所蔵されている天文十七年八月日の年紀がある「上州住憲重作」の脇指。この脇指は、群馬県指定重要文化財に指定されていた同工の脇指(裏年紀なし・県外流失による指定解除)と同様に刀身表に草倶利伽羅、裏に梵時・蓮台を彫っている。

  群馬県立歴史博物館第84回企画展 日本刀は語る 名工の技と心』(2008)
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 『憲重』最古の伝存刀剣
 天文九年二月日の年紀がある「上州住憲重作」の脇指は、伝存刀剣として最も古い憲重の作となる。鑑定刀として出品されたもので、押形が『刀工大鑑決定版』と『郷土刀の系譜』に所載されており、近年になって公益財団法人日本美術刀剣保存協会の保存刀剣審査に合格している。

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 法量
 刃長32.8cm 反り0.3cm 元幅3.02cm 元重0.59cm 茎長10.01cm 
 茎反り無し 茎元幅2.83cm 茎先幅0.77cm 茎元重0.67cm 茎先重0.23cm

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 説明
 平造、三ツ棟。棟筋の幅は狭く、おろしは尋常、重ねは薄めで身幅のやや広い造込みとなり、フクラは尋常に張る。反りは中間反りに先反りを加え、やや寸の伸びた小脇指の姿となる。地鉄は板目、刃寄りと棟よりは板目がやや細かく見幅の中程は特に板目が大きく流れてやや粗く肌立ち、淡く映りが表れている。
 刃紋は互の目、角張って尖刃を交え表は先の焼幅を広める。刃中は足・葉・砂流しが入り、小沸がついて匂口は明るい。帽子は乱れて掃け返りは長い。表の先は俯き、裏は尖る。茎は生ぶ、刃方を張らせて先を細め(舟底形)茎尻は浅い刃上がり栗尻。
鑢は勝手下がり(角度は浅く切に近い)目釘穴は小さく1個。銘は独特の書風で表裏に細鏨で長銘を切る。

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  得能一男『刀工大鑑決定版』(光芸出版 2004)

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  飯田一雄『郷土刀の系譜』(光芸出版 2010)

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